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「どうしたの。ていうか今、何時?」
「午前6時前。ごめんね、こんな朝早くに」
いやな予感が頭をかすめる。
ドク、ドクとあの日の様に心臓が鳴る。
「お母さんがね、倒れた」
呆然としていると、横にいた康二も起き出した。表情を読み取ったのか、スマホを貸せ、と口パクで言う。
「もしもし、朝香さん? 俺です、康二です。はい、はい。……また折り返しかけます。よろしくお願いします」
康二は電話を切るとこちらを覗き込んだ。
「……どうしろっていうの」
呼吸が、できない。
息を吸って、吐く。そんな簡単な事が出来ない。
苦しい、苦しい、苦しい。
「晴」
康二は軽く抱きしめると背中をさすった。
「どっちを選んでもいいと思うんだ。『行く』も『行かない』も。だけどな、俺は晴がラクな選択肢をとって欲しいと思うんだ」
康二はいつも味方だ。
どんな自分でも、受け止めてくれる、そんな存在だ。
「……行く」
康二はこちらを見た。
「本気か?」
コクン、と頷く。
「高校の寮生活から今日まで理由をつけて一度も家に帰ってない。だから、行く」
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