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「俺も行こうか?」
首を横に振った。
「いい。講義もあるし。代わりにプリントとノート取っといて」
そして急いで着替え始めた。
頭の中は最後に会った母さんの顔でいっぱいだった。
どの服を着るか一瞬悩んだが、動きやすさ重視で黒い長袖にジーンズを合わせる事に決めた。そしてお守りに康二がくれたアクセサリーを着ける。
「晴。飛行機のチケット、スマホで取っといたから」
「サンキュ」
クローゼットからリュックを取り出す。旅行には行かないため、大きいカバンはこれしかない。
あの日と同じ、まるで冷凍保存したかのように色褪せてないカーキ色リュックの中に、今の趣味が反映されたベージュの財布、スマホバッテリーと文庫本を入れる。
慌ただしく靴を履き、玄関を出ようとすると康二が呼び止める。
「晴」
「なに?」
「愛してるぞ」
「くっさい台詞だなぁ」
照れ隠しにそう答え、家を後にした。
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