第1章:ホームレス青年

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今の自分は世界で一番不幸だ。 最低限の服や生活用品が入った 大きなリュックサックを背に 俺、橋本海流(はしもとかいる)は思った。 まさか20歳にしてホームレスになるなんて! 15歳の時、 告白した初恋の相手(だんし)に 学校でアウティングされ不登校になり、 その後すぐに俺がゲイなことを噂で知った プライドが高く世間体を気にする両親には 一家の恥だと勘当され、 俺は母方のばーちゃんに引き取られた。 それから5年間 俺の唯一の家族だったばーちゃんが 先週亡くなり、 共に住んでいた家は 相続した母さんの兄である叔父が売りに出すと言い 出て行かなくてはならない。 15歳から必死に稼いだバイト代のほとんどは オンボロだった家の修理費や、 ばーちゃんの治療費と薬代のために 使っていたので、 自分への贅沢品などは あまり買ったことは無かったが、 リュックサック一つに 自分の全てが収まったことには びっくりだ。 これからどこへ行こうか。 どうやって暮らして行こうか。 ばーちゃんの最期までの入院費などで、 貯めていた金も吹っ飛んだ。 現在所持金9732円。 給料日まであと10日。 とりあえず今夜、 バイト後は漫画喫茶かな・・・。
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