エピソード2.死の迷走

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 暗い道は曲がりくねり複雑な曲線を描いていた。  ヘッドライトの先は真っ暗闇で鬱蒼とした森を照らしている。  時折、ライトに照らされた木の影がトラックに合わせて動き不気味さを醸し出していた。 「しかし変わった名前だな!ロシアあたりから来たのか?あんな所なんで一人で歩いてたんだ?家出か?それとも事件に巻き込まれたのか?」  純一郎はハンドルを操作しながらチラチラとシュクレンを見ては矢継ぎ早に質問をする。 「…わからない…何も」  シュクレンは前を見つめたまま小声で応える。 「おいおい、頭でもぶつけたのかよ!?病院行った方がいいんじゃねぇか?」 「…ビョーイン?」 「本当に変わってんな…とにかく街に着いたら病院に行く事だな!ああ、その…病院ってのはな、病気とか怪我とか治す施設の事なんだ」 「うん…わかった」  純一郎は適当に話しかけ、慣れたハンドル捌きでカーブを次々にクリアしていく。  しかし、純一郎がいくら語りかけてもシュクレンは一辺倒な返答ばかりで飽きてしまった。  スピーカーから流れる音楽のリズムを取るようにハンドルを指でしきりに叩く。  すると目の前に突然カラスが現れフロントガラス前でバサバサと羽ばたいた。 「なんだ!?このクソカラスが!!邪魔だ!!避けやがれ!!」  トラックは大きく左右に蛇行を繰り返して急停車した。  カラスは同時に飛び去って闇夜に消えていった。 「こんな夜にカラスなんてどうにかしてるぜ!不吉な…」 「…大丈夫?」  シュクレンは闇夜に消えたカラスを探すようにフロントガラスまで身を乗り出して空を見ていた。 「あ、ああ…大丈夫だ。こんな夜にカラスが出るなんて気味が悪いぜ…!」  純一郎は冷や汗を拭いトラックのギアを入れると再び走り始める。 「…街には…いつ着くの?」  シュクレンが窓の外を見ながら言った。 「あ…も、もう少しだな!」  そうは言ったもののいくら走っても街の灯りすら見えない。  先程からずっと同じ道を走っているような気がしてきた。 「…ねぇ、なんでこの道を走ってるの?…何を運んでるの?」  シュクレンの質問に純一郎は一瞬戸惑いを覚える。  そして、胃から冷たい何かが込み上げてくる感覚を感じた。 「まぁ、仕事なんだけどな。え~…、と…あれ…おかしいな…なんだっけ?」 純一郎は頭を掻く。  何の目的で走り、どこに向かってるのかわからないのだ。  それが思い出そうとすればするほど薄ぼんやりとしていて思い出せなかった。 「どうなってんだ?」
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