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「私、今までこんな事なくて。ひまわりなんてひまわりでしかなかった。でもなずな君に会ってからひまわりが特別なものになって……」
「うん、あるよな。そういうこと」
「だからこれからも私が書く小説は、なずな君と出会ってからの事しかかけないと思う。もう、なずな君と出会う前に何を考えてどう生きていたかも思い出せないほどだから」
嵐が聞いてて赤面するような、熱烈な千歳の告白だった。好きになれるものと出会うとそうなってしまうというのは嵐にも覚えがある。千歳にとってそれがなずなで、そんな彼女が小説を書くとすればなずなと出会って以降のことや、なずながきっかけのものとなるだろう。
千歳をモデルに官能小説を書くなずな。なずなをきっかけに短編小説を書く千歳。似たもの同士の二人は両思いということになるかもしれない。
「千歳ちゃんはナズに告白とかしないの?」
「振られるから嫌だよ。とくに今はせっかく文芸部を作れたのに」
「そ、そうだよな。良かった……」
ほっとした嵐は思わずそう呟き、失言したことに気づく。これでは友人達の仲を祝福できないと言っているようなものだ。
「いや違うんだ、俺はナズと千歳ちゃんお似合いだと思うし二人が付き合ってくれると幼馴染として俺は嬉しい。でも桂がさ、桂がせっかくできた友達に気を使ってまた一人ぼっちになるんじゃないかという心配があって」
「わかってる。本当に嵐君は妹思いだね」
慌てて『良かった』の意味を答える嵐に、千歳は穏やかに笑う。すでにしっかりと嵐のシスコン具合は理解されているようだ。
「告白なんてこれからもしないし、そもそも桂はもっと友達ができると思うよ。かわいい子だもん」
「……ナズに告白しないのか?」
「うん。だって私になずな君はもったいないよ」
どう見ても両思い。なのに千歳は自分の評価が低い。それが妙に嵐には気になる。しかしそれを問う前に、生徒会室についてしまった。
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