どうかしている文芸部

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「失礼しますー文芸部の副部長連れてきましたー」 納得できない気持ちのまま、嵐は生徒会室の扉を開けた。生徒会室は生徒会役員の私物により散らかっている。 「ああっ、いらっしゃい千歳ちゃん!」 女子の生徒会長は読んでいた書類を投げ捨てて千歳に向かう。この生徒会長はきりっとした美人なのに可愛いもの好きな態度を隠そうとしない。部の事で話があるからと部長か副部長である桂か千歳を連れてくるよう言われたが、もしかしたら単なる私利私欲で呼び出したのかもしれない。 「さぁ嵐はもう大丈夫だから帰んなさい」 「ちょっと、俺が連れてきたんですけど」 「大丈夫、千歳ちゃんは私がもてなすから! あ、ついでにこの書類保健室に持ってって!」 まったく大丈夫でなさそうな生徒会長は嵐を押し出す。その力に嵐も本気で逆う事はできるが、逆らっても仕方ないので流される事にする。今は千歳から距離を置きたいところだ。 嵐は一人生徒会室を出た。 こうなれば保健室へのおつかいに向かうしかない。もやりとしたものを抱えたまま、保健室へと向かった。 しかし保健室は施錠されている。教師が留守なのだろう、『十五分後には帰ってきます。病人怪我人は職員室にいる先生へお願いします』。 おつかいを終えるのは十五分後となりそうだ。彼はスマホを取り出し幼馴染に連絡した。 「ナズ、今から来れるか? 今、保健室にいるんだけどさ」 会話のとちゅうだというのに、電話の向こうからパイプ椅子か何かが派手にひっくり返る音がした。 『今すぐ行く!』 ただだらだら話して時間を潰したいだけだというのに、なずなはすぐこっちに来るという。 そして嵐は気付いた。『保健室にいる』と言えば普通は怪我や病気をしたと想像する。とくに嵐の場合、千歳と一緒に文芸部を出た。 それだけで千歳を好きななずなは『千歳になにかあった』と考えてうろたえ、パイプ椅子などひっくり返し、今ここへ全速力で向かおうとしているのだろう。 その嵐の予想通り、なずなはメガネがずれるほどに急いで保健室前にやってきた。 「それで嵐、僕は何をしたらいい? 人払いか? 避妊具の調達か?」 「ああいや、ごめんな。別に保健室を千歳ちゃんが利用しているわけじゃないんだ。千歳ちゃんは生徒会室で生徒会長とお茶してる。ちょっと時間できてなんか飲まないか誘おうとしただけなんだけど」 避妊具?と嵐は疑問に思いながら謝る。なにか誤解をさせてしまった。そりゃあ千歳が好きなら千歳になにかあったと考えてここまで必死になってしまうだろう。なずなもがっかりしすぎて無となっている。ずれたメガネ位置を直す気配もない。 「なんか誤解させて悪かった。そこの自販機で好きなの選びな」 「うん……」
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