どうかしている文芸部

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桂と嵐は双子の兄妹ということになっている。二人とも大人びた容姿をしているし、兄妹らしい遠慮のないやりとりのせいで誰も疑うものはいない。しかし本当は嵐は斉藤家両親に引き取られた子供だった。 「おまけに二人してダブってて皆より年上だしな! 俺は常識ないのと栄養失調で、桂は入院と手術で一年遅らせてんだ」 「それは……僕以外に隠してる事じゃないの? こんな所で言うべきことじゃないよ」 「学校にもバレてもいいかなって最近桂とも話してるんだ。千歳ちゃんにももう桂から伝わっているだろうし」 嵐は開き直るかのように大きな声で言って、関係のないなずながそれを咎める。 桂と嵐。二人は高校一年生だが十七歳で、双子ではない。そのことは秘密にしていたが、高校生にもなれば絶対隠さなければいけないようなことでもないと思えてきたのだろう。バレても構わないとおおっぴらに話す。 「嵐のその百合趣味って、桂さんの事が好きだからだと思ってた。でも血はつながっていないから普通に好きになれるはずなのに、百合推ししてるってことは違うんだね」 「あぁ、推しカプってそういうのじゃないんだよな」 「うん。僕もよく考えればそうだ」 深く深くなずなはうなずく。推しカプ=恋愛感情ではない。好きなのは間違いないのだが、なによりも幸せになってほしいという気持ちが強い。だから好きだからといって自分と結ばれることは望まないのだ。 「まあ桂からしてみれば俺が恋愛感情持っていようが百合萌えしてようが気持ち悪いことだろうから秘密にしなきゃなんねえけどな」 「……やっぱり、人の事で妄想したりするのって、気持ち悪いよね」 確認するかのようになずなは言う。きっと彼は千歳をモデルに書いている官能小説のことで自己嫌悪しているのだろう。確かに恋愛感情や創作意欲で人に性的な目で見られるのはあまり気分のよいものではない。しかしこうして萎縮してしまうのは違うと嵐は否定をする。 「趣味は仕方ねえよ。でもその代わり、TPOを守るのが大事だ。本人・苦手な人・第三者の耳に入らないよう、同好の士と楽しむのならきっと許される」 「う、うん……もう失敗しない」 『もう』?と嵐は聞き返しそうになる。しかし先程紙片を千歳に見られた時のことを思い出す。あんな些細なことでなずなはこれだけ反省しているなら、もう同じ失敗はしないはずだ。
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