どうかしている文芸部

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「創作ってさ、その人の性癖……じゃなかった、趣味が出るものなんだよ。だから文芸部的には趣味を隠しすぎるってのは良くないと思う。人に迷惑かけないように出してこうぜ」 「嵐はだからあの文芸部三か条を?」 「桂がエロエロ言ってるからな。文芸部入って理解ある仲間かできて増長して、それで桂が友達なくさないか心配なんだよ」 シスコンだ、となずなは言葉にはせずに思う。そして過保護で心配性なのだろう。嵐の計画通り、桂はエロエロ言ってはいるがそれは仲間内のことで、クラスやよそではやっていない。そしてミステリアスな文学少女として評判なあたり、本性は隠し通せているのだろう。それでもまだ友人は少ないが。 「創作に趣味が出る、か……千歳さんもそうなのかな?」 「あー、千歳ちゃんな。あれはあんま出てないかんじだけど」 嵐はじっとなずなを見る。千歳の趣味と言えば『なずな』なのだろう。あの小説はなずなと見たものをきっかけに書かれたものなのだから。しかしなずな本人は気付いていない。千歳を好きなくせになぜ気付かないのか、なずなはそこまで鈍かったかと問いたい。しかし我慢する。 「千歳ちゃんと俺らとだってつるんでまだ一年だし、これからわかるようになるだろ」 一年でそこまでわかるほうがおかしい。まだまだ千歳について知らないことは多いのだから。嵐はカフェオレを一気に飲んで紙パックをゴミ箱へと捨てた。 ■■■ 学校施設だというのにやけに高級そうなカップと良い香りの紅茶が千歳の前に出された。現在生徒会長からとても丁寧なもてなしを受けているが、私物だらけでものが多い生徒会室ではいまいちさまにならない。 「会長はいつもこんなおもてなしを?」 「うん、かわいい子だけね。むさくるしいのは紙パックのジュースで十分」 生徒会長はとても嬉しそうにてきぱきと支度をする。どうやら彼女のかわいいもの好きはキャラ付けでいっているとかではないらしい。かわいいものが好きならそこにある鏡でも見ていればいいのに、と千歳は思う。 「今度桂ちゃんも連れてきてほしいな。そしたら三人でお茶会しましょう。桂ちゃん、私よりずっと大人びた文学少女でぜひともお近付きになりたいのよね」 「そう、ですね。機会があれば連れてきます」 桂は実はこの生徒会長と同じ年なのだが、まだ言うべき相手ではないと黙っておく。実は桂が下ネタ大好き少女というのもこのかわいいもの好き生徒会長には伏せていた方がいい事実だろう。
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