どうかしている文芸部

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この辺りは千歳も把握していることだ。わざわざ本題にしてまで伝えたいこととは何なのか。生徒会長は険しい表情となる。 「ふと気付いたんだけどさ、この写真って盗撮じゃない?」 「え、ええ。そうですよね。まさか密告者が被写体に撮影許可を求めたりしないでしょうし」 「音声も届いていたってことは盗聴もしてるってことだよね。でもこの写真、どう見てから扉側から撮ったものではないの」 本棚を背景にした写真。これを撮るとしたら、今文芸部三か条のかかっている壁側にカメラが設置されたということになる。 しかし部外者が盗撮するのなら、普通は扉や窓からカメラを向ける。 「それでちょっと心配になっちゃって。もしかしたらまだ部室内にカメラとかが仕掛けられているのかも、って思うと、女子二人いる部活としては心配でしょ?」 「ああ、そういうことですか」 つまりこの生徒会長は今も文芸部室にカメラがしかけているのではないかと気になって、女子だけに忠告しようとしたのだろう。しかしカメラがない事は千歳はよく知っている。 「部室をもらってすぐ夏休みに部室の大掃除したからカメラなんてないと思いますよ」 「嵐もそう言ってたけどさあ、あの子雑でしょ。見落としとかないか心配なのよ」 「だいたいしかけられた壁側の本棚って既に処分してます。あの壁にはもう張り紙しか貼ってないです。確か部室の古い本は処分して本棚を減らすことになって、その本棚は生徒会室で使うことになったのではなかったでしょうか」 千歳は生徒会室の、ぎっしりと本やファイルなどが詰まった本棚を指差した。半年もたたないうちにもう生徒会室になくてはならない棚になっている。 「確か本棚をどう処分しようか悩んで生徒会に聞きに行ったら会長が『捨てるならちょうだい』と言ったような」 「あぁ……そうだったそうだった。『この本棚さえあれば生徒会室が片付く!』って思ってたはずなのになぁ……」 本棚を見て生徒会長はしみじみとため息をついた。どうやら生徒会には棚を増やせばなんとかなると考えている人間しかいないようだ。 そんなわけでカメラがしかけられたかもしれない本棚は生徒会にある。一度空にしたし、これだけぎゅうぎゅうにものを詰めていれば盗撮なんてできないだろう。 「そもそもカメラって電源を取るものでなければ電池式で、そこまで長く動かないと思います。盗聴器もそんなかんじで」 「うん? そうなの?」 「たまにSNSで注意とか見ません?『カフェのトイレにこれあったら注意』みたいな」 「あぁ、あるある。かばん掛けとかペンとかね。……って、私忠告したつもりだけど、意味なかったね」 千歳はかなり防犯意識がしっかりしている。おそらくは生徒会長よりも。となれば今日千歳か桂を呼び出したのも無意味だった。生徒会長は沈み込む。
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