17人が本棚に入れています
本棚に追加
朝は頭が働かない。桂はブレザーの制服に着替え終えてもぼさぼさ頭は寝起きと変わらなかった。
「うわ、今日もすげー頭」
朝、廊下で一目見るなり嵐は感想を述べる。そういう彼はいつでも学校に行けるよう制服はゆるく着崩し髪も無造作にセットされている。似たような重くてうねった髪質なのにどうしてこう違うのか。本当は少ししか血がつながっていない双子なのに。
「ドライヤー貸しな。髪まとめてやる」
「すまないねぇ。私も千歳みたいなサラサラ髪ならこんな世話焼かれなかっただろうに」
「……千歳ちゃんだって桂の髪に憧れてると思うぜ。あんまサラサラだとボリュームないし」
なんだか嵐は女同士の友情に夢見ているような事を言う。桂はそう思ったがこれから世話になる立場なので言わずにいておいた。
その嵐は桂の部屋に入り、慣れた様子でドライヤー等を手にした。まずはスタイリング剤を髪になじませ、温風を当てて冷風を当てる。それからブラシ。それだけでぼさぼさだった頭はツヤが生まれまとまりも出てきた。
「今日寒いからコートはダウンのやつ着とけよ」
「やだよ、太って見える」
「足もタイツにしとけ。裏起毛な」
「今日体育あるから無理」
まるで親と子だ。嵐は桂に対して過保護だった。それも桂が小学生まで入退院を繰り返す生活をしていたためだろう。
しかしその病気は大きな手術をして治っているし、彼女の両親だってここまで過保護ではない。そもそも彼は本当は遠い親戚だった。
「よし。じゃあそろそろ行くか」
「……いい加減、私も一人で電車に乗れるんだけど」
「電車通学初日に変態おっさんに付きまとわれて涙目になってたのは誰だよ」
そう言われると桂は反論できない。自分は性的な関心が強いが、自分にそれが向けられるのは苦手なのだった。嵐と一緒にいるだけでそんな事態が避けられるのだから、朝の通学時にはねるべく一緒に登校したい。嵐もそれを考え一緒に登校したい。
やはり嵐は過保護がすぎる気がする。普通の兄妹ならこんな過保護にはならないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!