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「作品のURL、嵐にも送っとくね。このエモさを弟と共有したい!」
「あ、嵐くんはもうフォローしてくれているから、更新した時点で通知が行ってると思うよ」
嵐というのは桂の双子の兄弟で、一応は文芸部に所属しているが基本生徒会書記としての役目で忙しい。壁にかかっている文芸部三か条も彼が考え彼が書いた。
部に顔は出さないが活動だって気に留めているようで、千歳の小説にも目を通しているらしい。
「ふぅん。あいつ何もいわなかったけどね。むっつりスケベだなぁもう」
「嵐も桂さんにスケベとか言われたくないと思う」
「はっきりスケベだからね、私は。未成年のうちから性的なものにガンガン触れていくべきだよ」
恥じる事なくはっきりスケベを自称する桂はまさにその通りだ。桂は見た目に性的魅力があるが、性格も性的なものを好む。ただしとくに経験があるわけではなく、思春期の男子中学生のような会話しかしない。性的なものならなんでも反応し、元思春期の男子中学生だった嵐やなずなでさえひくほどだ。
そんな桂は目をきらめかせたまま、千歳に話しかける。
「ところで千歳はエモいのもいいけどエロいのは書かないの?」
いつもの質問に千歳もなずなも呆れた。一応彼女のそれは素の顔で、仲間内にしか見せないものだ。普段は大人びた顔を作っているせいか、こういう仲間内では暴走しがちだ。
「十八禁要素は難しいと思うな。単純に書けるほど知識がないし、細かい仕草を描写しなくちゃいけないし。手順がめちゃくちゃになるっていうか、パンツ二回脱いでたりしそう」
慣れている千歳は普通に答える。男子の目の前なので赤裸々には語れないが、千歳には知識や経験がないから書けない。それに人間の動作だけに集中した内容を書くのは単純に難しい。
なぜかそれになずなはうなずく。しかしはっと我にかえった。
それに気付かず桂は説得を続ける。
「知識がないなら知ればいいじゃない。なんなら教えてあげるし」
無駄に色っぽく桂は言うが、なずなは止める。壁の文芸部三ヵ条を指差した
「桂さん、趣味のおしつけは禁止だよ」
「あ、そうだった。ごめんね千歳」
「ううん、もう慣れてるから大丈夫。趣味に素直になるのも部の決まりなんだから、桂も今のままでいいよ」
この辺りは三人のいつものやりとりだ。桂がエロを叫び、なずなが注意し、千歳がなだめる。
それにもう一人、幽霊部員の嵐が加わりまた彼らの関係性は変わる。
「桂か千歳ちゃんいるー?」
ノックもせず扉を開けたのは、先程から話題に出ていた斉藤嵐だ。桂と双子というだけあって、フェロモン溢れるような長身の大人びた美男子と言える。うねった黒髪の隙間から切れ長の目が女子二人をとらえた。
「生徒会長から呼び出し。来年の活動についての書類に不備があるらしくて、部長か副部長に来てほしいんだけど……なんだこりゃ」
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