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「僕はずっと、嵐には千歳さんみたいな人に結ばれてほしかったんだよ。子供の時からそう考えて、だから千歳さんと出会った時に目覚めたってことになるのかな。それとも子供の頃からか」
「……ええと、つまりナズ君は嵐に自分が思う理想の彼女を作ってほしいということ?」
「そうなる。嵐の歴代彼女じゃ納得できなかったんだよね」
「なんだかボーイズがラブな気配がするんだけど。それって嵐の事がめちゃくちゃに好きみたい」
ちなみに桂は性描写があれなんでもいいのでボーイズラブも読んでいる。
嵐に恋人ができればいいというのは一見友達思いな感情かもしれないが、いきすぎていれば恋愛感情にもとらえられる。自分では結ばれないとわかっているからこそ非の打ち所のない相手と結ばれてほしいと思うような、それは諦めた恋愛感情かもしれない。
攻めに彼女が出来た疑惑があって受けはそれに傷付きながらも祝福する、相手は非の打ち所のない美女だからと諦める。しかし実はそれが姉や妹で安心してひっつく。というのがBLで何度か見た流れだ。
「好きといえば好きなのかもね。僕的には、いつもかっこよく怪獣を倒していくヒーローに、ずっと勝ち続けていてほしいって感情なんだけど」
「つまり嵐がそのヒーローで、ナズ君はそれに憧れるファンってこと?」
「そういうこと」
その答えに桂は納得できた。確かに嵐はなずなにとってヒーローだったはずだ。なずながいじめられれば嵐は誰が相手でも助けに行くし、嵐にも一つ年上という意識があるので頼りがいがあるように振る舞っている。
だからかなずなの小説の中の嵐はとにかくかっこよく書かれていた。欠点さえも長所に変えるような、好意的な書かれ方をしていた。
だから女子として完璧な千歳と恋愛してほしいと思うのかもしれない。
「憧れかぁ。あるよね、そういうの」
「桂さんもあるの?」
「女子からしてみれば千歳が憧れだよ。髪なんてさらさらで、すらっと手足細長くて、子鹿みたいに可愛くて、なんでもこなして髪もさらさらで」
「髪さらさらなのってそんな重要?」
そこに気付くなずなも髪はさらさらだ。髪さらさらにはわからないコンプレックスがうねり髪の桂にはある。
「……まぁそう考えると千歳にいい男とひっついてほしいってのはわからなくもないかな。ただそのいい男ってのが私的には嵐ではないだけで。兄弟だからそういう判断基準がないだけなんだけど」
「でも桂さん、僕の小説読むよね……」
「だってナズ君の書くあらちとって全然本人じゃないもん。属性が同じだけの別人だよ」
桂が軽い気持ちで言った言葉はなずなの心を深く傷付けた。リアルな描写を目指している彼にとって、それは一番言われたくない言葉だ。
「あ、あのね、誤解しないでね。多分ナズ君の見ている嵐と私の見ている嵐は別人なの。それでナズ君はナズ君の見ている嵐を完璧にトレースしてる。だから別人ってだけ」
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