どうかしている文芸部

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嵐が勢いよく文芸部の扉を開けたせいか、ホコリのように軽い何かが浮き上がり宙を舞った。それらは何かの紙片のようだ。千歳の足元に落ちたため、千歳が拾い上げる。 「ノートを破ったものみたい。鉛筆で書かれてるね。乃木坂の【乃】に、子供の【子】に、……【め】?」 字が汚くて千歳にはそれしか解読できない。しかしなずなと桂は目を合わせて口をパクパクした。なんと書かれているのかわかったからだ。 「これ、捨てていいやつ?」 「い、いいんじゃないかな? 破ったものだし!」 桂がわざわざゴミ箱を持ってきて千歳に捨てるよう促す。彼女の肌には真冬だというのに冷や汗が浮かんでいた。 「皆、本当にこのメモ自分のものじゃないよね?」 「き、きっと、前の文芸部のものじゃないかな? 捨てていいよ、うん、捨てよう!」 「前の文芸部って、とっくに潰れてて、そこを不良達がたまり場にして、それが追い出されて、私達が文芸部をできるようになったんじゃなくったっけ?」 なずなは青い顔で身を乗り出してごまかそうとするが失言する。 この部は今年作られたばかりの部活だ。大昔には文芸部が存在したが廃部、今年冷暖房完備のこの部屋を不良達がたまり場にし、この春に賭博・飲酒・喫煙などを行った事が明らかになった。 学校側は部室を余らせてはろくなことにならないと判断し、部を作りたがっていた桂達を文芸部として認め、夏休み前にこの部屋を託したという。夏休みには掃除もして、とっくに自分達の城にしている。 だからこの部屋でメモが見つかったとしたら、それは現在の文芸部のものだ。 「まぁ破ったってことはゴミだろうから捨てとくね」 しかしあっさりと千歳は紙片を捨てる。なずなと桂は紙片がひらりとゴミ箱に到達してから、安堵のため息をついた。 「話戻すぞ。書類のほうだけど、千歳ちゃん来てくれるか? ちょっと生徒会の奴らと話さなきゃいけないかもしれねえから、人見知り桂は留守番で」 「あ、はーい。行ってくるね」 言われて、千歳は桂達に手を振って嵐と共に部屋を出た。そして扉が完全に閉まってから桂となずなはへたりと座り込む。 「……焦った……まさか僕がボツにした官能小説を千歳さんが拾うなんて」 「ね。まさか『孕め』なんて書かれたメモが落ちてるとか。ていうかナズ君何書いてんの! 何ボツにしてんの! 私に見せなさいよ!」 「嵐✕千歳保健室プレイなんだけど、よく考えたら嵐は『孕め』なんて言わないと思って、気づいたら破ってた。ちゃんと捨てたと思っていたのに、まさかそのワードが二人の前に舞い戻るなんて」
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