どうかしている文芸部

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「千歳、下ネタが好きってわけじゃないのよね。でも嫌悪しているわけでもなくて、受け流してるだけっていうか」 「……知識がないって話だけど、まったく知らないわけでもないよね?」 「うん。普通の女の子くらいなら。他の友達とはちょっと過激な少女漫画を貸し借りしてるみたいだし」 「彼氏とか、いたのかな?」 なずなの疑問に桂は唇を噛む。過去に彼氏がいたから桂のような耳年増の下ネタなんて気にならないのではないか。むしろかわいいものだと思っているのかもしれない。 「……とりあえず今はいないよね。彼氏持ちなら文芸部とかここまで通ってられないし、そんな影ない」 「ああ。でもモテるだろ? 中学の時とかいたかもしれない」 「中学の時は知らないからなぁ。めちゃくちゃにモテてただろうってのは予想できるけど」 桂が千歳と出会ったのは高校入試時だ。それより昔を桂は知らない。 しかしあの容姿と性格ならモテていたはずだし、現時点でもモテている。この文芸部で一番謎が多いのは彼女かもしれない。 「もしかして千歳さん、嵐に片思いして嵐のそばにいるために桂さんの下ネタに耐えているのでは?」 「やめて、そのあらちと妄想は私を傷付ける。ていうかリアル千歳、本当に嵐に特別興味ないし」 「本当に千歳さんは嵐を好きとかないの?」 「……どちらかと言うと、」 桂はなずなをじっと見つめた。『どちらかと言うとナズ君のが好きそう』という言葉がでかける。千歳が嵐を好きというよりは、千歳がなずなを好きでいるほうがあり得る。なんとなくだが桂はそう気づいていた。ただしそれはなずなに伝えてはいけない。 「千歳、とっくに長身イケメンに告白されてて断ってるから。長身イケメンの分類の嵐は好みじゃないってことだと思うよ」 「なるほど。そうだったのか……じゃあ無理やりものを書こう」 「……本当にあらちと好きだね」 もしも千歳がなずなを好きだとしたら、それは両思いになるのだろうか。なずなは小説を読む限り間違いなく千歳の事が好きなのだが、それは一般的な恋愛感情とは言えない気がする。 「はぁ。嵐と千歳さん、今頃なんの話をしているのかな」 「普通に部の話してると思うけど。ナズ君もついていけばよかったのに」 「推しカプが二人きりになるところを邪魔したくないよ。都合よく教師不在の保健室に行っててほしい」 「……私もエロエロ言っててどうかしてる自覚はあるけれど、ナズ君もなかなかだよね……」 壁に貼られた書、文芸部三か条。なんとかその決まりを守るべく、彼らは自分の性癖をはっきり言葉にするし、本人達の目に届かないよう活動するのだった。
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