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「空気が読めているのなら大丈夫だよ。皆個人差はあるけど性的な話はそこまで嫌いじゃないけど、空気を読まずにまき散らす人が嫌いなだけだから。人が性的な話するだけならそこまで嫌悪しないよ」
「……うん。俺も桂がそういう人間になってほしくなくてあの決まり作ったんだ」
「それに桂ってあれだけ性に興味津々で言い寄ってくる異性も多いはずなのに、誰とも付き合ったりしないの、けっこうかわいいと思う」
「かわっ!?」
まるで自分がかわいいと言われたかのように、嵐はうろたえ赤面した。確かに桂は性に関心はあるが本などから情報を仕入れるだけで、実践しようとはしない。あの豊かな胸など大人びた容姿は異性からの注目を集めるはずだが、それに応じることはなかった。
しかしそれを千歳はかわいいと称するようなことだろうか。とてつもない包容力だ。
「桂って、病弱だったから性に関心を持つようになったんじゃないかな」
「ああ、それはあるかもしれねえ。入院で本ばかり読んでたし、死が近いとそういうことばかり考えるとか言うよな」
「うん。それにご家族に大事にされてる。だから自分を粗末にできなくて、実践はしない耳年増な痴女が誕生したの」
千歳は嵐をじっと見ながらこの一年で親友の内面を察した。嵐のようになんだかんだ気遣われる兄弟がいれば自由人にもなる。だから異常なまでに性に関心は持っているし、下手な男と付き合ってまで実践しようとしない。そう考えれば桂の性格も良いように思えるが、そう思える千歳がすごいだけかもしれない。
「千歳ちゃんって聖人か何かなの?」
「成人?」
「清らかとか尊いとかそういう聖人な。本当に君がいてくれて良かった」
「……そんないい人間じゃないよ、私」
千歳の暗い声に、嵐は褒めすぎて嫌味にとられたのかと不安になる。千歳は何もない廊下を見つめていた。単なる謙遜かもしれない。
「さっきね、何かの紙が部室で見つかった時、すごく嫌だったもん。桂となずな君、私に内緒でなにかしてたみたいで。嫌なことばかり考えてしまう自分に嫌になる」
「あー……あれかぁ……」
さっき宙を舞っていたなんらかの紙片。嵐にはそれが何かわからなかったが、桂たちの反応でわかってしまった。多分、あれは官能小説か何かを書かれたものだ。
嵐は一度、間違えて届いたなずなからのメールを見て知っている。なずなは官能小説を書いていて、それをPCに送ろうとして間違えて嵐に送ったらしい。男性側も女性側も描写が細かくリアルでよく書かれた作品だった。そういえばその女性側は千尋という少女で、正統派美少女な描写が
千歳に似ている気がする。
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