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「ふわああ、やっと終わったー!!」
最後の一問を解き終えたあたしは、ペンを置いて両腕を思いっきり上に伸ばした。
文化祭が明けた週、毎朝ホームルーム四十分前に登校して国語の課題を進めたあたし。
長い文章を読むのはやっぱり苦手で、解きながら何度呻き声を上げたかわからない。
でも、一緒に早く登校してくれた舞ちゃんにところどころ教えてもらいながら、なんとか少しずつ進めることができた。
そして修了式前日の今日、ようやく最後の一枚まで終わったってわけ!
「舞ちゃんほんとにありがとー! 今度なにかご馳走するね。夏休みどっか遊びに行こうよ!」
「ふふふ、楽しみにしてるね。あ、そうそう、私実は行きたいところがあるの」
「どこどこ?」
舞ちゃんが告げたのは、先月オープンしたテーマパークの名前だった。
「そこあたしも気になってた! 行こ行こ!」
「ほんと? でね、実はすでにタクマくんと行く約束してるんだけど」
「えー! なにそれ!」
またタクマくんか!
中学校に上がってから、この人物名に何度邪魔されたことか。くう……。
「今の、あたしを誘ってくれる流れじゃなかったの!?」
「待って、最後まで聞いて」
「……はい」
かっとなってもいいことがないと二週間前に学んでいたあたしは、トーンダウンして話の続きを待つ。
「調べたらね、どうやら四人くらいで行くとちょうどいいアトラクションがたくさんあるらしくて、よかったらみかるたちも一緒にどう?」
「えーっと……」
あたしが行くのはもちろん大賛成なんだけど。
「た、たち、と言いますと……?」
さらっと付け加えられた二文字にイヤな予感がして、聞き返す。
「はあ」
わざとらしいほど大きなため息をついた舞ちゃんが、あたしの肩に右手を置いた。
「あのね、みかる」
美しいセミロングヘアに囲まれた端正な顔に、普段の舞ちゃんからは想像がつかないほどに邪悪な微笑みが浮かんでいた。
「ちょっと成長したからって、私の目をごまかせると思ったら大間違いよ」
「へっ、あ、う……」
黒魔女のような眼差しに囚われて、体が言うことを聞かなくなる。
「あんたたち、わかりやすすぎるんだから」
呪文のように囁かれたその言葉が、引き金だった。
みるみるうちに頭の中で蘇ったのは、あの夜の記憶。
必死に振り払おうとしても、あのときの彼の姿が鮮やかに浮かび上がってきて、心臓がいつ爆発してもおかしくないくらいに騒ぎ始めた。
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