2 あたし、この部に入ります!

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「浅野くん!」  そう、今朝あたしを怒鳴りつけたクラスメートの浅野磁緒くんだ。 「人の顔見て『うげっ!』だなんて失礼だと思わないのか?」  浅野くんは、ギターから目を離さないままぴしゃりと言った。  それを言うなら、人の目を見ないで話すのも同じくらい失礼じゃん!  ……と思ったけど、やっぱり口には出せない。 「あれ? もしかして知り合い?」  モニ先輩に尋ねられて答える。 「あ、はい、同じクラスなんです」 「それはよかったですね、浅野くん。が入ってきてくれて」  テツ先輩のふんわりした声が耳に入り、あたしは考えた。  えっと、あたしと浅野くんは、「友達」なのかな? 「いや、友達じゃないっす」  浅野くんにあっさりとそう言われて、胸がチクってする。なんだろう、告ってないのに振られた感じ。 「浅野くんは一足早く春休みに入部してから、今まで一人で寂しかったはずです。瀬底さん、仲良くしてあげてくださいね」  浅野くんとあたしの間に流れている空気に気づいていないのか、あえて無視しているのか、テツ先輩はそんな能天気なことを言うばかり。  それはそうと、浅野くん、空き時間はずっと音楽聴いてるなって思ったら、軽音部だったのか。春休みから入ってるってことは、結構熱心にやってるのかな。 「いやー! どうなるかと思ったけど、みかるんが入ってくれたから、なんとかバンド結成できそうね!」  スキップするみたいに歩いて、鍵盤楽器の前に戻るモニ先輩。  あたしの隣のセラ先輩も、ドラムセットの奥のテツ先輩も、それを受けて「うんうん」とうなずいていた。  大変だ。なんかもう入部する雰囲気になってる。  言わなきゃ、あたしバレー部の見学に行くんだって。 「あの、すみません、今日は——」 「よし! 一通り自己紹介終わったところだし、一回演奏聴いてもらおっか!」  モニ先輩が掲げた拳に、あたしのお暇の言葉は再びかき消されてしまった。
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