3 そんなに良かったんですか?

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 モニ先輩が、浅野くんとあたしを見比べるように視線を動かす。 「そう? ジオ、任せちゃって大丈夫?」  そう言ったモニ先輩を、なぜかテツ先輩がじとーっと見ていた。 「モニ、人の心配もいいですが、文化祭オーディションの申込書は出したんですか?」  モニ先輩が、「あー!」と声を上げながら両手を頭に当てる。 「忘れてた! いつまでだっけ?」 「今日の十七時ですよ」 「うわ、ヤバっ! あと三十分じゃん! ていうかさ、事務的なことはてっちゃんがやってくれることになってなかったっけ?」 「『オーディションは気合入れたいから私がやる!』って言ったのは誰ですか?」 「ごめんてば! 今書いて出してくる……あー、だけど書き方わかんないかも! てっちゃんも一緒に来て!」 「はいはい」  そうしてモニ先輩とテツ先輩はいそいそと廊下へ出ていった。 「あの二人って、仲いいんですね」  あたしが呟くと、セラ先輩が「お、気づいた?」と言ってウインクしてきた。そのタイミングでウインクする必要なくない? 「モニとテツは幼馴染。ドラム未経験だったテツが軽音部に入ったのも、モニに無理やり引っ張られてだったらしいよ。前いた先輩の指名で二人がそれぞれ部長と副部長になったんだけど、オレも正解だと思う。性格が全然違う二人で補い合って、いい感じに運営してくれてる」  話しながら、セラ先輩はカバンから筆箱とノートを取り出して、黒板近くの教卓まで歩いていた。 「それじゃ、オレも今から作詞に入るから。ジオ、みかるちゃんのこと頼んだぜ! 卒業生が置いてったベース使っていいはずだから、渡してあげて」  浅野くんは、「ういっす」と返事してから、教室の後ろの角にある扉を開けて、隣の部屋へ消えていった。たぶん、あの部屋が倉庫なんだろう。  うう……。それにしても、よりによって浅野くんか。  テツ先輩とかがやさしく教えてくれればよかったのに。
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