1 天才の手!?

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 ※ ※ ※  その日の放課後。 「ごめん、忘れ物しちゃった! 先行ってて!」  舞ちゃんにそう告げたあたしは、下りてきたばかりの階段を上り直して、教室に戻った。    今から、舞ちゃんと一緒にバレー部の見学に行く。  あたしは知ってるんだ。スポーツ万能なイケメンにモテるには、女子もなんだかんだ運動できたほうが有利だってこと。  女子バレー部に入れば、同じように体育館で活動してる男子バレー部とか、バスケ部とか、イケメンがたーくさんいそうな部活の近くで練習できる。  バレーは二年間くらい児童館のクラブ活動でやってたし、そこそこ得意なほうだ。  体育館でキラキラしてるあたしの姿を見せつけて、運動部のイケメンにアピールしちゃおっと!  教室のロッカーから忘れ物を取り、るんるん気分で階段を下りる。  一階にたどり着いて、昇降口のほうに足を向けた時だった。    正面から、男子生徒が歩いてきた。  左目がギリギリ隠れそうなくらいの長い前髪。スラリとした長身。  目鼻立ちが、見たことないくらいに整っている。  こんなアイドルみたいにきれいな男子生徒、うちの学校にいたんだ。  ネクタイが青色だから、三年生。人気ありそうだなー。    イケメンだからってジロジロ見てしまわないように気をつけながら通り過ぎようとして。  その先輩が不自然なタイミングで足を止めたことに気づいた。  気のせいじゃなければ、先輩がじーっとあたしの右手を見ている。  え、なに?  恥ずかしくなって右手をブレザーのポケットにしまおうとした時、とろけるような声が鼓膜に届いた。 「君、もしかしてさ……」  早足で歩いてきて、あたしの右手を取る先輩。  途端に、血液の流れが速くなる。  イケメンに突然手を握られたから、というのもあるけど、それだけじゃない。  あたしは、生まれつき人差し指と中指の長さが同じ。  人差し指が中指くらい長くて、薬指、小指の順番に短くなっていく。  お母さんに聞いたところ、原因はよくわからないけど、なにかの病気とかではないっぽい、とのこと。  これといって日常生活に不便はないから、あたし自身もそんなに気にしてなかった。  ——ある時期までは。
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