2 あたし、この部に入ります!

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 四角い黒縁メガネ。やや短めの、一本たりとも跳ねていない黒髪。引き締まった細い腕。  男子生徒は、あたしに視線を移すなり、和やかに微笑んだ。 「瀬底さん、はじめまして。軽音部の副部長、パートはドラム。三年生の神地(かみじ)哲矢(てつや)です。『テツ』って呼んでくださいね」  天気予報の晴れマークみたいな、やさしい笑顔。  先輩男子に敬語で話しかけられるなんて滅多にないから、ドキッとしちゃう。    よかったー、穏やかタイプの先輩もいるんだー。  ……って、安心してる場合じゃない。  先輩方が自己紹介してくれたところ悪いんだけど、今日はバレー部の見学に行かなきゃ。 「あの、すみません、あたし今日は……」 「いやー! 新入生やっと二人目! ワクワクするなー!」  あたしのお(いとま)の言葉は、モニ先輩の楽しそうな声に遮られた。 「そうそう、新年度になってから気づいたらオレら三人しか部員が残ってなかったからさ、みかるちゃんたちが入って来てくれてほんとに助かったぜ!」  セラ先輩が、そう言いながらあたしに向かってまたウインクする。セラ先輩って、自分が圧倒的にかっこいいってことを自覚してる気がする。うん、絶対そうだ。 「あの、他にも新入生がいるんですか?」  この部に入る気なんてないけど、モニ先輩の言った「二人目」という言葉が気になって尋ねてみた。  だってさ、どこにあたしの王子様が隠れてるかわからないじゃん?   一つひとつの出会いを大事にしなきゃ。 「いるよ、ほら」  セラ先輩の視線を追って、左側に目をやる。  部屋の隅っこに男子生徒がいることに、気づいていなかった。  真っ黒でサラサラのミディアムヘア。切れ長の目。両耳に紺色のイヤホンをつけて、無表情でひたすらギターを弾いている。 「うげっ!」  男の子に見覚えがあることに気がついて、思わず下品な声が出た。
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