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この村ではことごとく『ピョン吉』スタイルだ。
早口言葉はカエルピョコピョコ三ピョコピョコしか無いし、子守歌代わりは『かえるのがっしょう』という童謡である。ただ『かえるのがっしょう』はリズミカルでテンポもいいので、なかなか寝付けない子供も多かった。だが、そこに疑問を呈する人は皆無だった。もう、根差していたんだと思う。
この村だけが『ピョン吉』スタイルなのだろうか?
ここから車の風圧で身体を傾げたり、トラックの振動で背伸びしたりして覗けるテレビでは、1度も観たことがなかったが、この風習は他の村ではどうだろう?探せば似た風習を受け継いでるところもあるんじゃないのだろうか。
これまで『ピョン吉』スタイルが当たり前のことだったので、このような疑問が頭の中に浮かばなかったのが、なにか自己欺瞞のようで面白い。
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冬場は、カエルたちは当然冬眠する時季なので、カエルがほとんど取れず、毎年カエル不足になる。そのときは『ピョン吉』スタイルの人たちはもちろん、普通の人も時間があればカエルを一緒に探してくれる。どうやっても見つからない場合、人間とはしたたかなもので、折り紙でカエルを作りそれをぶら下げている。
誰も文句は言わない。
そもそも気付いていない人も多い。
ぶら下げている人もどこ吹く風である。
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