また、会える日まで

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 潮風が包む。体毛を整えると、絡む塩がしょっぱい。でも、そんなことには慣れてしまった。  海が広い。どこまでも空が続き、その果ては想像がつかない。僕は、この街しか知らないから。 「おい、ベンガル。今日も日向ぼっこか?」  港の漁師達が、笑みを見せながら言ってきた。初めは魚目当てで、僕がここにいると思っていた漁師達。随分と嫌な想いをしたけれど、今では友達のように話しかけてくれる。利口にしていれば、人間は優しい。そう。それを教えてくれたのは、あの叔父さんだ。  この街であの叔父さんと出会ったのは、僕が子供の頃。犬に襲われた僕を叔父さんが助けてたのがきっかけだ。人間はもちろん、誰かに助けてもらったのは初めてだった。僕が虐められても、みんな知らん振りだったから。だから初めは叔父さんも警戒していた。何をされるか分からないと思ったから。だけど、過信していたと直ぐに気が付いた。叔父さんは、みんなと違った。怪我をした僕の前を通り過ぎたかと思えば、直ぐに引き返して来て、怪我を癒やしてくれた。そして、そのまま僕を抱えて、あの場所に連れて行ってくれた。叔父さんから香る美味しそうな匂いが今でも忘れられない。  連れてきてくれたのは、おじさんの家。そこで焼きたてのクロワッサンを食べさせてくれた。あまりの美味しいそうな匂いに我慢出来ずに夢中でほうばっていると、叔父さんは豪快に笑いだした。 「俺のパンが気に入ったか? ベンガル」  小さく叔父さんを見ると、嬉しそうだった。 「お前は、わかる奴だ。俺のパンが世界一ってわかる猫は、中々いないぞ」  そう言って、頭を撫でてくれた。  後に、叔父さんはパン屋さんだという事を知った。叔父さんの匂いの意味を理解した。 「毎日来ればいいさ。ベンガルのために、ありったけのパンを残してやるぞ。勘違いするな。売れ残りじゃないからな。それに、お前はお利口さんだ。俺は、そんなベンガルが好きだな」  叔父さんは、そう言って僕を誘ってくれた。嬉しかった。  それから、毎日叔父さんの店に通った。パンはもちろん、叔父さんと顔を合わすことが楽しみにだった。叔父さんも、僕に色々と話をしてくれる。僕が猫だっていう事も構わずに。まるで、友達だ。          
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