君の左心房に恋をした

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 1970年。日本経済が高度を迎えた頃、僕は兵庫の一街にいた。その街にあるペットショップ。そこが住処だった。人間はお金を手にして浮かれていたのか、毎日のように仲間達を求めてやって来ては、一匹。また一匹と連れ去っていった。そんな光景をずっと眺めていた。つまり取り残されていたのだ。  羨ましさが膨らみ、寂しさが混じる。悶々と日々を過ごした。『ずっとこのまま檻の中にいるのだろうか?』不安が募っていった。だけど、そんなものは直ぐに宙に消えていった。こんな僕も、ここを離れていく時がやって来た。それがあの人だった。  突然現れた少女は、ゲージの向こう側から目を輝かせて、僕を見つめてきた。 「この子可愛い」 「でも、ウチの家にペルシャ猫なんて似合わへんわ」 「えー。お母さん、話ちゃうやん。誕生日やから、なんでも買ってくれるって言うたやん。なあ、お父さんはええやろ?」 「んー。しゃあないなぁ」 「やったぁ! やっぱお父さんは話が分かるわ」  僕を見てはしゃぐあの人。ドキドキしていた。さらにキラキラとさせた目が、また僕に向いている。目を合わせる事ができなかった。だけど、それよりも僕の心が掴まれたのは、あの人が鳴らす鼓動。その音に、僕は心を奪われていた。
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