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エピローグ
「あっ……」
授業中、由香が小さく声を上げた。
スッ。
「どうぞ」
涼太が、長い腕と大きな手で彼女の蛍光ペンを拾い上げる。
由香は、「ありがとう」と微笑んだ。
(最近、よく笑うよな)
何の運命の悪戯か、3年になっても同じクラスになった涼太と由香は、また、まさかの隣同士になった。
頬杖をつきながら、涼太は気づかれないように、由香の顔を盗み見た。
何事もなかったかのように、黒板を見る横顔。
澄み切った眼。光が映り込む瞳孔。
ボブにした、艶やかな黒髪。
顔の角度は、少し上向き。
(やっぱり、大幅なイメチェンだよな。春休み中に会いに行ったけど、びっくりしたな)
「涼太くん、前向かないと勉強、大変だよ?」
「あぁ、ごめん」
「大隈重信です」
誰かが答えた。
涼太は聞いていなかったが、先生が質問をしていたようだった。
涼太はニヤッと笑いながら、ノートを1ページ戻ったところに貼った、中2振り返りテストを見返した。
90点とvery good!!の文字が大きく書かれている。
「ここ、テストに出すぞ〜」
涼太は、慌ててページを元に戻し、その図を書き写した。
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