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「吉井くんに、関係ある?」
彼女の、下ろした髪とワンピースが、風になびく。
彼女は、シャーペンを首元に刺すような感じで当てていて、人形のように微動だにしない。
穢らわしいものを見るように、世界や涼太を、澄んだ琥珀色の眼が見下ろす。
「危ないじゃん。シャーペンの芯が首に刺さったら大変だし、落ちたら、どうするんだよ?」
「だから、吉井くんに関係ある?」
「……ある、あるから。隣の席だから!」
「はぁ? 隣の席であることに、何の意味があんの?」
涼太が口を開こうとした瞬間に、由香が声を発した。
「ほら、意味なんかないじゃん。私、そういうの大っ嫌いなの。理由もないのに、正当化して、一方的に自分の意見を押し付ける人」
「意味は、ある」
「ふーん、そうなの」
「毎日見ている人が欠けたら、俺は困るし、嫌だ」
「……毎日、見てる?」
「うん。隣の席だから。黒板を見ると、必然的に藤沢さんが見える」
「……そう」
由香は、困ったように笑った。
涼太にも、由香が笑ったのは分かった。でも、笑った理由は、よく分からなかった。
「何、してるの?」
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