66人が本棚に入れています
本棚に追加
それにしても、イラスト動いてる。最近のゲームのキャラはイラストでもちゃんと動いてるように見えるのは純粋にすごいと思う。アニメともちょっと違うこの感じ、嫌いじゃない。
ただ、可愛い女の子のイラストで開発費を使い切ったのか、背景は真っ黒だ。その上、メニュー画面もない。本当にただ真っ黒な画面の中に女の子のイラストがあるだけだった。
『あ、あなた! そこのあなた!』
少女は奈々子の姿に気付くと、ばたばたとこちらに走ってきた。少女がアップになると真っ黒な背景は気にならなくなった。それに、なかなか可愛らしい。
『無視しないでよ!』
画面をタップしてゲームを進めろということだろうか。しかし、画面のどこを触っても、少女の機嫌は治らない。
『返事をしなさいと言っているの! 人間の言葉もわからないの? わたくしがレティシア・ナヴァールだと知っての愚行かしら!』
誰?
ゲームのプロローグにしては、随分とこちらを罵って来るものだ。これが最近の流行なのだろうか。お客様は神様、とまでは思わないが、罵られて喜ぶほど屈折してもいない。
「なんなのよ、これ」
残業終わりに意味不明なアプリの対応に追われ、奈々子はすでに限界だった。ついぽろりと独り言を口にしてしまう。
すると、画面の中の少女が烈火のごとく怒り出した。
『なんなのよ、じゃないのよ! わたくしはレティシア!』
どうやら音声認識対応のアプリらしい。
最初のコメントを投稿しよう!