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そして今日もまた俺は無傷で、信道はボロボロ。こんな日があと何日続くのだろうか。
逃げ出したいと思っても、行動に移せるほど度胸がなかった。
帰り道、いつも来る河川敷で傷の手当を粗方済ませる。死角になっているのもあって周りに人はいない。ご丁寧に周りにバレないように放課後の人気のない場所で、しかも見えないところばかりを狙うから、誰にも気づかれていないらしい。親にも。
「なぁ、天野」
ふいに、呼ばれて信道を見るといつもとは違う顔をしていた。
「生きるってなんだろうな」
こんな顔初めて見た。いつも笑顔でいる信道は、こんな顔俺にみせたことなんてない。こんな、辛そうな顔。
「…なんで、お前は泣かない?そんな辛そうな、今にも泣きそうな顔して、なんで我慢するんだよ!」
なぜ、そんなに俺は頼りないのか?
そうだよな、こんな何にもできない俺に言ったところで無意味だ。でも、その気持ちを吐き出して少しでも楽になるならいくらでも聞く。
「泣けよ!辛いって言えよ!」
たった一人の友達のためなら、その友達が困っているなら何だってする。
「……辛い。もう嫌だ、死にたい」
沈黙の後、ポツリ、ポツリとこぼれた言葉はどれも俺に刺さった。
「俺がいるから、ずっと、いるから」
だからなんだと言うのだ。俺がいたところで何になる。そうは思ってもこの気持ちを、思いをどう言葉にしていいのかわからない。
「頼って、俺を。頼りないだろうけど、お前のためなら何だってする。一緒に俺も戦うから、」
─────────生きてくれ。
「ありがとう」
そこまでは言葉にならなかったが、思いが届いたのかそう言った。お礼なんて、言う必要は無い。なにも、助けになれていない俺に、そんなのは勿体無い。
「俺、ちゃんと生きるよ」
「っ、...おう!」
それでも、信道が前を向けたことが嬉しかった。俺たちの幸せはこれからだ。
───────これからの、はずだった。
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