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「……な、んで」
頭がついていかない。涙さえも出ない。ただ呆然と立ち尽くす。
「しんどう……」
目の前には写真の中で笑う君がいた。
「ちゃんと生きるって言ったろ、なんで」
あの時笑ってそう言ったのは本心ではなく、心配をかけないためなのか。
「っ、……うそつき」
思わずこぼれた言葉は、涙と共に流れていった。
何がなんだかわからないままお通夜とお葬式を終えてからは、何もやる気が起きなくて、何が現実なのか分からなくてただ部屋出ぼーっとする毎日。
誰か来たのか、下では少し話し声が聞こえた。その少しあと、部屋のドアがノックされ母の声が聞こえた。
「一真にお客さんよ」
「……お客さん?」
下に降りると玄関に居たのは
信道の両親だった。
「一真君にこれ、あの子の部屋から見つけたの」
挨拶をした後すぐにそう言って差し出されたのは、手紙だった。
「これって、」
「見ない方がいいと思ったから私たちは見ていないの」
だから、何が書かれているのかは分からないと言った信道のお母さんは俺に「ありがとう」と言って帰っていった。
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