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「いえ。こちらこそ」
男性は俺にそう言って、優しく微笑んだ。
その笑顔もまた綺麗で、同性相手に思わずドキッとしてしまった……。
うっかり見惚れそうになっていると、男性が「あ……」と、何か気付いたかのようにゆっくりと口を開く。
「もしかして、今日の十三時からそこのラウンジで打ち合わせ予定の、広告会社の方ですか?」
「え? あ、はいっ……」
ということは、この人が今日の打ち合わせ相手?
取引相手に前方不注意でぶつかってしまうなんて何たる失態、と反省しながらも、過ぎてしまった事は仕方無いので、せめて今更ながら背筋を伸ばす。
「良かった。申し遅れましたが、今回の企画担当の高城と申します」
「み、水樹です。よろしくお願い致します」
最近ようやく慣れてきた所作で、俺は彼ーー高城さんと名刺交換をしながら挨拶を交わした。
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