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しばらく待っていると、「高城 結羽さん。三番の診察室へお入りください」というアナウンスが待合室に流れた。
診察室へ入ると、四十代くらいの優しい顔立ちの男性の医師と目が合う。
「こんにちは。どうぞ、お掛けになってください」
先生は口調も声色も柔らかくて、ずっと抱いていた緊張感が少しだけ解けた。
俺が丸椅子に腰掛けると、先生は問診票を見ながら話しを始める。
「高城 結羽さんですね。今日は、妊娠しているかどうかの確認ということでよろしいでしょうか?」
「は、はい」
「市販の妊娠検査薬を使ったりはしてみました?」
「はい……。でも、その、陰性だったんです。四週間程前、発情期中にアルファのパートナーと、その……したのに」
そう告げると、先生も「そうなんですか。おかしいですね……」と小さく首を傾げる。
しかしすぐに、にこりと笑いながらこう言うのだった。
「とりあえず、内診しましょうか」
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