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「友達でいたい…」
山科百合子は泣きながら、八並玲子にそう言った。
玲子は自分にも友達などいないことを思ってか、だんだん百合子の言うことを否定しなくなっていった。
「これからも仲良くしたいよ」
百合子はそう言って、ポロポロ涙を流した目で玲子を見た。
「まぁ、お前には転校してきてから色々世話になったからな。借りは返さねえとな…」
玲子はそう、ボソボソと呟いた。
「え?じゃあこれからも友達だよね?」
百合子は急にパッと明るい表情を浮かべて、そう声を上げた。
「あ、あたいは、借りは返すって言ってるだけだよ」
「そう。じゃあ友達でいて下さい」
「ちぇっ。しょうがねぇなぁ」
玲子は罰が悪そうな顔をしてそう言いながら、一人早足で歩き続けた。
「待ってよ」
百合子はすぐに嬉しそうに、玲子の後を追いかけ、小走りに前に進んだ。
だがその時だった。
玲子の前に、鷹のように鋭く美しい顔立ちをした長身の女子が突然姿を現した。
玲子は背後に百合子を匿いながら、目の前の人物を警戒して睨みつけた。
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