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その日、3年A組の朝礼では、担任教師の武藤剛史により、美しくも可憐な転校生、八並玲子が紹介された。
しかしその姿は、金髪に、ケバすぎる化粧にピアス、着崩したようなセーラー服姿で、まだこの学園の制服を着ていなかった。
玲子は武藤の一通りの紹介の後、いきなり一人教壇に立ち、新しいクラスメイトに向かって、片手を前に出し、腰を落としてから声を張った。
「ご一統さん、お高いところからの突然の仁義、失礼致します。
そちらの新宿遼子さんに、タイマン仁義発します。
わたくし、生まれも育ちも京都です。
比叡の風に吹き飛ばされ
ながれながれて、このジュクのネオン街
やさぐれ果てたゴロマキ番長
いにしえの都、京都で番を張ります、ゴロマキ玲子、です。
お前さんとのサシのタイマン、お願い致します」
と突然の仁義を切ったのである。
すると一番後方の席で、机に長い美脚を乗せて、スマホを見ながらタバコを吸っていた、かなり大柄で美しい女生徒がすっと立ち上がった。
こちらも茶髪にケバい化粧、乱れた制服姿の女生徒。
賀川遼子こと、泣く子も黙る紅竜会会長、人呼んで"新宿遼子"であった。
遼子は鋭くも美しい瞳で玲子を睨みつけて、こちらもさっと片手を前に出し、腰を落として言い放った。
「仁義、受けさせてもらいます。
わたくし、生まれも育ちも新宿です。
グレはじめたのは12の夏、
ネオンも消えぬ不夜城で
ゴロ(喧嘩)、ウリ(売春)、買物(万引き)上等のやさぐれ渡世
ただいま、ここで番を張ります、新宿遼子、です。
お前さんのタイマン仁義、しかとお受け致します」
と、仁義を返したのであった。
一瞬、教室内に凄ざまじい緊張が走った。
遼子と玲子は鋭い視線でお互いに睨み合った。
だが突然の玲子の仁義切りに、遼子の子分たちは憤慨しながら席から立ち上がった。
すぐに怒鳴りだしたのは、遼子の一の子分、十字架の美樹だった。
「てめえ、ぶざけんじゃねーぞ!ここをどこだと思ってんだ!このジュクの真ん中でよそもんがゴロマキとはナメるんじゃないよ!」
と噛みついた。
「まあ待て。こいつとはここでサシのタイマン勝負だ」
と遼子は、玲子を睨みつけながらそう窘めた。
「ちょっと…。ここで喧嘩はやめなさい!」
担任教師の武藤剛史は、蒼ざめた顔をしながらそう口を挟んで、玲子を抑え込もうとした。
すると玲子は、担任の武藤の腕を掴んで捻り上げてから、武藤を力一杯往復ビンタした。
挙句、みぞおちに膝蹴りを食らわし、武藤は悲鳴を上げながら床に崩れ落ちた。
「先公だろうと邪魔する奴は容赦しないよ!おい遼子、表へ出な!」
玲子は怒鳴り声を上げた。
「いい度胸だ!」
そう言うと遼子は、教室から廊下に出て、臨戦態勢を取った。
玲子も構えた姿勢で遼子と向き合い、次の瞬間、遼子に激しく襲いかかった。
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