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翌日。 警察署から八並玲子は、不貞腐れた様子で出てきた。 喧嘩両成敗という言葉があるのに、自分だけが喧嘩の張本人だと言われてお咎めを受けたからだ。 まあこっちからタイマン勝負を仕掛けたのは確かだが、新宿遼子はそのタイマンを受けたではないか。 なのに遼子は何のお咎めを受けず優等生顔していることに、玲子はひたすら苛ついていた。 あの野郎、ヌンチャクなんか振り回しやがって…! 警察では、玲子が京都にいた頃、母親の再婚相手の義理の父親に売春を強要され、それで義父を半殺しの目に遭わせたのが傷害事件となり逮捕され、少年院に入ったことをほじくり返されて、ひたすら厳しい取り調べを受けた。 今回は厳重注意で済んだが、 "また私だけが加害者で相手は被害者かよ!" とブチ切れながら、玲子は私立華良女子学園に渋々戻ることになった。 職員室で教師に注意を受けた後、授業中に教室の扉を玲子が開けると、一気にクラスの雰囲気は凍りついたような緊張状態となった。 教壇に立っていた教師も、いきなり慌てた顔をした。 それ以上に、クラスにいる紅竜会のメンバーたちが殺気に満ちた視線で玲子を睨みつけていた。 新宿遼子も、玲子を鋭い美しい瞳で厳しく睨みながら、派手な舌打ちをした。 だが玲子はそれを全く意に返す様子もなく、ただ黙って自分の席に着いた。 その瞬間、遼子が長い脚を地面に思い切り叩きつけ、ドンッ!という激しい大きな音を出した。 "再度タイマン勝負勃発か!?" と、クラスメイトや教師は緊張した面持ちで一瞬震え上がったが、玲子がそれを完全にシカト(無視)したため、教室中に殺気立った気配が充満しただけで、それ以上の事態は起こらなかった。 だが、紅竜会のメンバーと新宿遼子は、終始、玲子を殺気立った目で睨みつけ続けていた。 玲子は途中で授業に参加したため、今教師が何の講義をやってるのかさっぱりわからなかった。 訳も分からず黒板の方をただ呆然と眺めていたが、急に隣に座っている大人しそうな女生徒が、教科書を玲子の方に見せ、 「ここのページよ」 と教えてくれた。 その上女生徒は、自分が書いた今日の授業を書き写したノートを玲子に見せてくれた。 「わからないところがあったら、後で聞いてね」 女生徒はそう玲子に小声で囁いた。 「お、おう…」 戸惑いながらも、玲子はそう呟いてから、少し照れ臭そうに教科書を開き、女生徒の書いたノートに目を向けた。 隣の大人しそうな女生徒は、名を山科百合子といった。
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