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「おい百合子、テメエ、この間フォーチュンクッキー馬鹿にしただろ!」
ひまわりバンドのヨシちゃんは、山科百合子が一人でトイレに入ったところを狙って、すぐに自分も中に入り、いきなり百合子を脅した。
「え?馬鹿にしてないですよ」
百合子は何が何だかわからず、驚いてそう言った。
「嘘つけ!テメエ、この間、ゴロマキ玲子と一緒にフォーチュンクッキー馬鹿にしたじゃねーか!」
ヨシちゃんは百合子に、完全な言いがかりを吹っかけた。
それも実際に自分をオチョくったのは玲子だとわかっていながら、玲子には手が出せない故に、百合子の方にゴロを巻くダサイ心理からであった。
「馬鹿にしてませんけど…、あの、何か気に触ったことがあったんなら、ごめんなさい」
百合子は青い顔をして、真面目にそう言って、訳も分からず頭を下げた。
「この落とし前はどう付けてくれるんだい!?」
ヨシちゃんはそう言いながら、不敵な笑みを浮かべて、百合子を睨みつけた。
「落とし前って…」
百合子は戸惑ったまま、震えた声を出した。
「よし、じゃあお前、買い物やれ!」
ヨシちゃんはいきなりそう言った。
「買い物?わかりました。何買ってくればいいんですか?」
「ちげーよ!買い物と言やー、万引きだろ!」
ヨシちゃんはそう言って、百合子を怒鳴りつけた。
「え?万引きですか…!そ、それはちょっと…」
百合子はさらに震えた声を出して青くなった。
「なんだよ!テメェ、今わかりましたって言ったじゃねーか!あたいをナメてるのかい!」
ヨシちゃんはさらに睨みを効かせて、そう百合子にまた怒鳴った。
「ごめんなさい…で、でも…」
百合子がそう震えながら言って、渋っていたその時、いきなりトイレの中に、長身の女豹のような美貌が現れた。
紅竜会会長にして、この学園の番長、新宿遼子だった。
後ろからは子分の十字架の美樹も付いてきた。
「どうした?ピョンソ(便所)で何ゴロ巻いてんだい?」
遼子はすぐにヨシちゃんにそう尋ねた。
「はい、兄貴、こいつが買い物やるそうです!」
ヨシちゃんはいきなり勝手にそう断言した。
「え?わ、私は…」
百合子は恐ろしくなり、すぐにヨシちゃんの言うことを否定しようとした。
だが…
「おお、そうか、じゃあこれから学校フケて、買い物だ。ちょうどプチプラのコンシーラーが欲しかったところだ。駅前の"マツシマタカシ"でマチキル(待ち合わせ)ぜ!」
と遼子が言い出し、有無を言わせず、百合子は無理矢理、万引きに参加することになってしまったのであった。
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