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7
その時八並玲子は、昼休みが終わっても隣の席に山科百合子が戻ってこないことが気になっていた。
いつも何かと世話を焼いてくるので、昼休みくらいは百合子と離れて、物陰に隠れてタバコを吸い、一人憩いの時を過ごしていた玲子であったが、午後からの授業が始まっても百合子が戻ってこないことが気になった。
その上、教室を見渡すと、新宿遼子以下紅竜会のメンバーもそこにはいなかったのである。
まあ遼子達が昼からの授業をフケて、どこかへ消えてしまう事はよくあることなのだが、真面目な生徒である山科百合子が急に何も言わずに、昼から消えてしまうというのは解せない話だった。
昼からの授業を受け持つ教師も、百合子がいないことを気にしているようだったので、どうやら、知らぬ間に早退したというわけでもないようだ。
遼子らが昼からフケる場合、だいたいやることは決まっているな、と玲子は同じスケバンの勘からそう思った。
まぁ大概、ロクなことはしちゃいない。
だが、
もしや…??
百合子は紅竜会の連中に巻き込まれてはいないか?
急に玲子は、そんな気がした。
もしかしたら百合子は、このところ遼子と敵対している自分に世話を焼いているので、遼子らから自分のダチだと思われている可能性がある。
そうなると、自分を狙う代わりに百合子に手を出すことも有り得る…という危惧が玲子に生まれた。
玲子は居ても立っても居られなくなり、急に教師に、"腹が痛いので保健室に行く"と一方的に通達し、有無を言わさず、すぐに教室を飛び出した。
ひょっとして買い物か?
いずれにしても駅前の繁華街で遼子らはたむろしてそうな気がする。
そう思った玲子は、すぐに駅前の商店街地域に直行した。
やはり紅竜会のメンバーがそこにはいた。
新宿遼子の姿も見えた。
そして、案の定、その中に怯えて立っている山科百合子の姿が見えたので、すかさず玲子は一直線に百合子のところに急行した。
ひまわりバンドのヨシちゃんが百合子の身体を抑えていたが、玲子はいきなりヨシちゃんの腕を掴んで捻り上げ、不安そうな顔をしている百合子を自分の背後に匿った。
「てめー、何しやがるんだい?!」
玲子に腕を捻ねられたヨシちゃんは、痛そうにしながらそう声を上げた。
「うるせえ!てめえ、きたねーぞ。百合子に手出ししやがって!」
そう怒鳴りながら玲子は、さらにヨシちゃんの腕を強力に捻り上げた。
「ギャー!!」
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