乙女ゲームの脇役に転生してしまいました

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学校の授業は基本的には簡単だった。 知らない単語が出てくることもあったが、何となくで乗り越えるのは愛海の得意なところだ。 そして昼休みになり、機会を伺っていた愛海はアンジェに近付く。 「食事はここでみんなで食べましょう!」 令奈であるアンジェのその言葉に周りにいる女子生徒は頷く。 それを愛海は止めに入った。 「アンジェ。 今日は二人で昼食をとらない?」 「え?」 「ごめんね、みんな。 私とアンジェはちょっと話があるから」 令奈から許可を得ずに愛海はそう言った。 「エイダがそう言うなら仕方ないね」 女子生徒はエイダが言うなら、と言ってすんなり受け入れてくれる。 アンジェの腕を引っ張り外へと出た。 「どうして二人がいいの? みんなで食べた方が美味しいのに」 「だから話があるんだって」 「それにどうして愛海が言ったことをすぐに受け入れるんだろう・・・」 「それは私がアンジェの親友ポジだから!」 「親友ポジ? 何それ?」 「令奈は今、令嬢なの! クラスで一番大金持ちなの!」 「嘘!?」 「それで私は二番目にお金持ちだから、アンジェの近くにいられるんだよ」 そう言うと怪しむような目で令奈が見てきた。 「・・・もしかしてそれ、愛海が言っていた恋愛アプリでの設定?」 「そうだよ?」 「またそれ? ここは現実の世界なんだって」 二人はベンチに着き昼食をとっていた。 学園には執事は入れないが、学園自体がお金持ち用のようで一人ずつ昼食を渡してくれるのだ。 だがアンジェのものとエイダのものでは少々内容が違う。  現代でなら差別と言われてしまいそうだが、明らかにアンジェのものの方が豪勢だ。 「本気でここが現実の世界だと思ってるの? 姿も名前も変わっているんだよ!?」 「自分の頬をつねってみた? ちゃんと痛みがあるでしょ」 そう言われつねってみる。 確かに痛かった。 「でもここは確かにあのアプリの世界で・・・」 令奈を説得させようと試みるが彼女は首を横に振るばかり。 全然信じてくれないことにヤキモキしながら朝食をつついていると、異様なオーラを纏った男子生徒が通り過ぎようとした。 「あれ? アンジェじゃないか」 他を歩いている男子生徒とは明らかに違う衣装。 学校であるというのに胸には勲章のようなものさえ付けている。  そして愛海はそれに見覚えがあり、信じられない気持ちを抑えながらもそれが誰かを確信していた。 そう、ベンジャミンだ。  アプリで大好きだったベンジャミンの登場に愛海だけでなく令奈も目を輝かせていた。 「・・・! もしかしてベンジャミン王子!?」 「もしかしなくても、僕は本物のベンジャミンだよ」 ―――え、嘘・・・。 ―――目の前にベンジャミン王子がいるんですけど・・・!? 先程まで画面の中にいた彼を見て、やはりここはアプリの世界で間違いないと理解した。 整った顔立ちに爽やかな笑顔はアプリのスマートフォンの壁紙にしているベンジャミンと重なった。  もっとも令奈はイケメン男性アイドルを見るような目付きだが。 「アンジェ。 今週の日曜日、空いていたりする?」 「もちろん! 空いているけど、どうしたの?」 「アンジェと二人きりでデートがしたくて」 ―――デート? 今の会話の流れには憶えがあった。 ―――今の会話は昨夜に見たものだ。 ―――つまり今の進展具合は、ストーリーの終盤・・・! ―――デート中に悪役令嬢が、ベンジャミン王子からプロポーズを受けるんだ! デートの約束をするとベンジャミンは離れていった。 すぐに令奈に向かって言う。 「令奈! この学園から逃げよう!」 「どうして?」 「この後令奈は、ベンジャミン王子に殺されるの!」 単刀直入に言ったつもりだ。 このままでは令奈は信じてくれないと思ったから。 だがそれでも令奈は信じてくれなかった。 「ベンジャミン王子が? いや、そんなこと彼がするわけないじゃん」 「本当だから信じてよ!」 「あ、もしかして嫉妬? カッコ良い王子を私が一人占めしているから?」 「だから、違うって・・・」 「もういいよ」 令奈は呆れて一人教室へと戻ってしまった。 絶対とは言えないが、シナリオ通りに進めばそうなる確率は高い。 残念ながらと言うべきなのか、悪役令嬢が処分されないルートは存在しなかった。 ―――どうしよう。 ―――このままだと令奈は、本当に・・・!
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