乙女ゲームの脇役に転生してしまいました

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ベンジャミン視点 ベンジャミンは二人の後ろ姿を見つめながらエイダの言葉の意味を考えていた。 ―――・・・逃げる? ―――逃げるって何だ? ベンジャミン自身二人に逃げられるようなことをした憶えはない。 そうなると、他の何かから逃げているということになるが、明らかにエイダはベンジャミンの顔を見て表情を変えていた。  今までそのようなことはなかったし、ルックスにも自信のあるベンジャミンはそれが許せなかった。 ―――アンジェは完全に僕に心を許していた。 ―――それだというのに、エイダの奴・・・。 見た目だけで言うのなら華やかで美人なだけのアンジェよりもエイダの方が好みだった。 あわよくばという気持ちもあったが、まだ行動には起こしていないのだ。 そこで嫌な予感が頭を過る。 ―――・・・ッ、もしかして! ―――僕が地位だけでアンジェを選んだということが、エイダにバレたのか!? 一気に冷や汗が出る。 ベンジャミンがいい人だというイメージが崩れ落ちてしまうのだ。 ―――だとしたらエイダが厄介だな・・・。 ―――今週の日曜日に、アンジェにプロポーズをして成功させる気でいたのに。 ベンジャミンはイヤホンの通信機で執事に繋いだ。 表事だけでなく、裏の仕事も担当してくれる信頼できる男だ。 『どうなさいましたか?』 「アンジェとエイダが正門へと向かった。 捕まえてくれ」 『アンジェ様とエイダ様が?』 「できるよな? 僕もすぐにそっちへ向かう」 『・・・かしこまりました』 それ以上何も聞かず了承したことに満足気に頷き通信を切った。 これで二人はベンジャミンの手中に収められるだろうと確信している。 ―――この僕が直々に迎えにいくとしよう。 ―――喜ぶことだな。 ベンジャミンも正門へ向かおうとしたその時。 「・・・あの、ベンジャミン王子」 一人の女子生徒に呼び止められた。 茶色の長い髪を持つ地味な少女で名前はエミリーという。 普段ベンジャミンの周りにいる女性と比べれば明らかに華がない。  だがベンジャミンは完璧な笑顔を作ってみせた。 「やぁ、エミリー」 「こんにちは・・・」 ―――最近エミリーとよく話す。 ―――僕はこの国の王子だ。 ―――だから僕がモテるのは仕方がない。 ―――エミリーは庶民で僕とは全然釣り合わないけど、こうして笑顔で接してあげているんだ。 ―――感謝してもらわないとね? 「あの、ベンジャミン王子。 今週の日曜日は空いていたりしますか?」 庶民が王子に予定を尋ねるなんて有り得ない行為だ。 一瞬頭が沸騰するよう血が上り、激高しそうになったが周りの目を見てそれを抑えた。 「あー、ごめんね。 その日は既に予定が入っているんだ」 「そうですか・・・。 もしかしてその予定って、アンジェ様と・・・」 「その通り。 よく知っているね?」 「ベンジャミン王子とアンジェ様の仲がいいことは、皆知っていると思います」 ―――庶民が高嶺の存在を噂しているということか。 ―――しかし、それを知っていて予定を聞いてくるってどういう神経をしているんだ? エミリーに悪印象を持っていたわけではないが、今はこれ以上話したくないと思ってしまう。 それに今頃執事がアンジェとエイダを取り押さえているはずだ。  どのみちエミリーに構っている時間はなかった。 「それじゃあ、僕は忙しいから」 「・・・あ」 エミリーはまだ何か言おうとしていたが、それを聞くこともせず背中を向けた。 正門では流石というべきか命令した通り二人の執事がアンジェとエイダを捕まえていた。  目立たないように壁の影に隠れてはいるが、顔の知れた二人だけにあまりモタモタすることはできない。 「ベンジャミン王子! 一体これはどういうこと!?」 「うん? それはこっちの台詞だよ。 どうして僕から逃げようとしたの?」 「・・・」 エイダは硬く口を閉ざした。 それが答えなのだ。 ―――やっぱり僕の本当の姿を知っていたんだ。 「何も答えてくれないんだね? 僕の別荘へ、二人を連れていって」 「かしこまりました」 「ちょっと、ベンジャミン王子!」 アンジェとエイダは抵抗するも屈強な執事に腕を捻り上げられ、あっけなく連行されていった。
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