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人類補完教会
「人々の間には見えない壁があります」
「はい」
「それらを取り除かなくてはいけません」
「は…ぃ」
「なぜならそうしなければ真の友愛には及ばないからです」
「な……るほど」
「さぁ勇気を出して下さい」
セミロングの黒髪を靡かせている女性信者の髪はステンドウグラスから入り込む正午の陽光を反射してキラキラと音を立てている様だ。
「し、しかし」
「しかし?なんでしょう?」
「本当の事を言ったら…」
「言ったら?」
「嫌われないですか?」
「主はこう言われてます」
「はい」
「嫌われる事を恐れては真の人間と人間の絆は生まれないのです」
「き……絆、ですか?」
「もしも、嫌われたとしてもその先に真の絆があるはずです」
「わかりました」
女性信者はニコリと微笑み軽く頷きました。
「ゴホン……で…では」
「はい」
「私は貴方が好きです!」
「え?」
「貴方の……その、恋人になりたい!」
「それは無理です」
「えええ!だったら入信しませんよ?」
「それは困ります」
「だったら!」
「いえ、あなたの顔とか小太りなとことか、汗かきとか、色々と生理的に無理です」
「……ハッキリと言いますね」
「そういう教えなんで」
「じゃ、じゃあ恋人は無理として!」
「はい」
「胸を揉ませてください!」
「え?」
男は立ち上がってにじり寄った。
「きゃー!」
ビターン
男は強か引っ叩かれ横に飛んだ。
「大丈夫か!」
男性信者が寄ってきた。
ビターン
男性信者も引っ叩かれた。
「な、なんで?!」
「あんた奥さんも居るのにワンチャン狙ってる様な目がキモいのよ!」
女性信者はハッキリ言った。
そう言う教えだから。
「なんだお!渡部だってあんな綺麗な奥さん貰ってるのにワンチャンどころか猫ちゃんまでねらってるだろ!」
「よくわからないけど、そういう若者言葉使う所もキライあんた30代後半なのにまだ激しめのキャパクラ探してるらしいわね!」
「ね、年齢は性欲と関係ないだろ!」
「………」
ビターン!
黙って聞いていた司祭が引っ叩かれた。
「…え?」
「あんた司祭なんだからボケッと見てんじゃないわよ!!!」
「す……すみません」
彼女は最初の男性に向き直った。
「てゆかあんた、私みたいな可愛い子と話せるなんてこと一生なさそうなんだからしのごの言ってないで入信しなさいよバカみたいな顔してないで」
「ひ、ひどい……そ、そんなに可愛くないのに」
「……はぁ?今なんて?」
「そ、そそそ、そんなに可愛くない!あんたは体だけ!」
「……お、おまえ」
「な、なんすか」
パチパチ
どこからか拍手が湧いた。
パチパチパチパチパチパチパチパチ
「おめでとう!」
女性信者は満面の笑みでそう言って笑っていた。
「おめでとう」
「おめでとう」
いつの間にか部屋中に信者が集まって来た。
割れんばかりの拍手や歓声が聞こえ男は戸惑いながらも不思議な感情に包まれた。
「よく自分を曝け出しましたね。あなたは補完されました」
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