エピソード①ホラー/見て見ぬふり

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その2 「こういうのって、人にはうまく伝えられないんだけど、何かが起こりそうなそんな感じがすると、見えるの。だいたいは人の背後から蒸気が立ちこめて、首から頭にかけてもわーって、漂うような感じで…。限りなく透明っぽいグレーにうすい茶色がまぎれているのが多いかな…」 いきなり母は、見える”それ”をリアルに語っていました。 「…具体的に言うとね、小学生の時、水泳大会である男子が自由形のレースに選ばれたんだけど、その時の彼からはそれが出てたの。しかも、結構やばいかもってレベルに感じてね。迷ったんだけど、その男子にそれとなく、やめた方がいいって言ったの」 しかし、彼は変なこと言うなって、母を一笑に付したそうです。 さすがに、母もそれ以上は強く言えず、結局その男子は水泳大会に出たのですが…。 「彼、レースは無事終えたんだけど、その後、しばらくしてプールサイドで見学してる時、気分を悪くして、倒れちゃったのよ。それで、肺炎になって入院しちゃったわ」 「...」 ... 彼が退院した後、母は彼から事前の忠告を頭から聞き入れなかったことの謝罪を受けた上で、どうして”それ”が分かったのかと尋ねられたそうです。 「当然、それが気になるわよね。でも、私は何となくとしか言わなかったわ。正直にオーブみたいのが見えたなんて言ったら、みんなに気味悪がられて、下手したら仲間はずれにされるでしょ。この時だって、カンが強い方だからって言っただけで、ちょっと変な目で私を見ていたもの」 その彼は、今一つ納得いかないような顔をして、以後もバツが悪かったそうです。 「人に見えないものが見えるのは辛いものよ。それでも、子供の時は正直、そんなに頻繁じゃなかったからまだね…。それが、高校を卒業する前後からは、ぐんと見えるようになったの。頻度も多い時は毎週一人とかって…」 そんな母を大いに悩ませたのは、そのすべてが”的中”ではなかったことでした…。
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