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Sという国で、花が一輪、管理されていた。
その花は蕾の状態で、しかも凍らされている。
花の管理者である男、シイナは、今日も冷凍装置の状態と花の具合を見る。
大掛かりな装置が設えられた、分厚い壁に囲まれた暗い部屋。その向こう側、壁と同じく分厚いガラス越しに、白い霜を纏った花がある。
床は剥き出しの地面で、花はそこから真っ直ぐ生えている。電灯ひとつに上から皓々と照らされているそれは、閉鎖寸前の小さな劇場でスポットライトを浴びる俳優のようでもある。
「今日も、異常なし」
だがシイナは、退屈そうにボソリと呟くだけだ。
もう数十年、毎日同じ光景を見ている。就いた初日から、彼はこの仕事に飽き飽きしていた。
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