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仕事の時間
「天君早退!?具合悪かったのにサッカーとか…ごめん」
(雨宮は申し訳なさそうにしているが、蒼が近くにいるのにこいつは馬鹿なのか?)
「雨宮君、大丈夫だから」
するとバカみたいな力で蒼が俺の腕を引っ張っていった。
「日向でいいのになあ…」
「私、あの二人よく早退するとこみるよ。ぜーったい体調不良じゃないでしょ!」
「疑うのはよくないよ~」
「疑うことを覚えなよ…」
(関わりたくない奴に限って無神経に近づいてくるのはなんなんだろう。というか…)
「蒼!いつまで引っ張るつもりだ。腕が痛い」
「お前こそどういうつもりだよ!」と声を荒げる
"裏切られるだけ" 蒼がよく言う言葉だ。
きっと今までの環境が作り上げたのだろう。
「でも変に怪しまれて勘ぐられるのも嫌なんだ。わかってくれるだろ?」
俺が言い返すとさっきとは逆に小さな声で「ごめん」と呟いていた。
「帰ろう。迎えが来るまで寝るから蒼起こしてよ」
「わかった」
俺たちの家は本部にある部屋を借りることもできたのだが、
ボスが「高校に通うなら別の家を用意した方が良い」とのことで
少し離れたマンションに二人で暮らしている。
正直家なんてほぼ寝るためだけでリビングなんて殺風景だ。
仮眠をとっているうちにいつものようにチャイムが鳴る。
——————ピンポーン
「お迎えに参りました。」
「車で待っててくれ。」
「天、起きろ、迎えが来たぞ。」
俺らはスーツを着て迎えの車に乗る。
車が『如月家』の門をくぐればもう高校生ではなく裏社会の人間。
そしてボスの部屋のドアを開ければ仕事の始まりだ。
「よく来てくれた息子たち。今日の仕事は政治家の暗殺だ。よろしく頼むよ。」
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