真を写す

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新しい職場で仲良くなった、年下の先輩の家へ遊びに行った秋場は、壁の額に飾られた一枚の写真を見つけた。 それはセンターが大きく左にずれた、下手くそな集合写真。 日付は三十年も前の北陸、芝国ランド。 忘れもしない、それは彼が初めて一人で撮影した写真だった。 「ああ、それね。 亡くなった親父がいい顔で写ってるんですよ!確かカメラマンが新人で、一生懸命撮ってくれたから買ってあげた、北陸は良い所だった、とか言ってね」 ああ、良かった。 取り敢えず、取り敢えず。 俺達が咲かせた花は、今でもこうして誰かの心に咲いてくれているのだ。                         《完》
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