真を写す

11/13
前へ
/13ページ
次へ
「えー最近話題になっていますが。 将来的にAIが取って代わる、つまりなくなってしまうだろうと言われる仕事がありますよね」 令和になり、テレビやネットではそんな話も聞く。 歳を取って、あまり流行に興味がなくなった秋場にも分かる程、時代は変わって行く。 ざんぎり頭をぽんと叩けば、文明開化の音がする。 開化とは開花と同じだろう。 世の中が良くなる様に、便利になる様に。 そう考えた誰かの努力が花開き、今の暮らしがあるのだ。 今では国民総カメラマン等と言われる。 写真は子供からお年寄りまで、ごく普通に気軽に撮れる物になった。 特に昔はカメラを敬遠気味だった女性が、率先して写真を撮る様になった。 それはとても素晴らしい事だ。 今時の若者達に「写真屋さん」の仕事を何度か話した。 どうしてそんな無駄な事をしてたのか。 たかが写真のために。 平成じゃなくて昭和の話だ。 早く辞めて違う仕事をすればよかったのに。 だいたいは笑われ、呆れられた。   だが秋場も、笑ってくれれば良いと思っていた。 写真屋さんが消えて行ったのは、その時代を知らない者には理解してもらえない仕事だからだ。 そしてこれからも、無くなっていく仕事がたくさんあるだろう。 だが、そんな仕事があったからこそ、今があるのだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加