私の花は咲かないのかもしれないけど、

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 何年も何年ももがき苦しんでいたけれど、二十代後半になり、さすがにアイドルになる夢は無理だと感じ、就職することにした。  オーディションを受けた時に前々から誘われていた、アイドル要請所のダンス講師として働くことにしたの。  自分がアイドルになりたかったのであって、講師や振付師になりたかったわけじゃないけれど、それでもこの仕事を選んだのは、結局何かの形で「アイドルになりたい」という夢に関わっていたかったのかもしれない。  二十代後半から正式に講師として働き始め、私もついに三十代前半になったけど、未だにかつての夢への想いとの折り合いはついていないと思う。  昔の知り合いが活躍しているのを見かける度に悔しくてみじめな気持ちになるし、一度だけでもアイドルとして舞台に立ちたかったなぁという気持ちが今も消せない。  つぼみのまま花開くことなかった夢の残骸を抱え、毎日を生きているけれど、そんな私でも教え子がデビューする時は心から笑うことが出来た。 「先生のおかげでデビューすることができました。本当にありがとうございます!」  初めてレッスンに来た時はひどい状態だった子がどんどん上達していき、ついにはデビューまで決まったときの笑顔を見たときは、最初は複雑な気持ちになってしまった。  自分には叶えられなかった夢を叶えることの出来た彼女たちを見て、胸がチクリと痛んだの。でも次の瞬間、私は自分の花を咲かせることが出来なかったけれど、他人の花を咲かせることは出来たんだって誇らしくなって、そして少しだけ救われた気持ちになったんだ。
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