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舶来の"ぷでぃんぐ"という菓子の類の話を、左官の金太郎は聞いた事がある。
その"ぷでぃんぐ"たるモノは黄色い見た目をしており、台のような形で上に茶色い"そうす"が塗られていると聞く。その味は甘美なものであり、舌に乗せればたちまちとろけるという珍妙な物であるそうだ。
今まさに金太郎が見つけた箱の中身が"ぷでぃんぐ"というモノだろう。箱を開けた途端にびいどろの器から見えるそれから、ほんのりと甘い匂いがする。
…困った事に、大工の吉五郎が茶屋の椅子に置き忘れてしまったのを見つけてしまったのだ。
これだけ聞けば、何が"困った事"なのか?と言いたくなるが、以前にも似たような事があったために"困った事"なのである。以前は3両の入った財布であったが、吉五郎が落としたそれを金太郎は拾って返したのである(勿論ネコババなどはしていない)。
しかし、吉五郎は"諦めた金であるから受け取らない"と言う。しかし江戸っ子である金太郎も"何が何でも返さなければならない"と折れずにいた。…そこで、奉行の出番である。
その話を受けた忠相が1両を出し2両ずつ2人で分けるよう諭したという逸話が、かの有名な"三方一両損"なのだ。場が収まった所で忠相の計らいで膳が出てきた話は全くの余談だろう。
吉五郎も全く懲りない、と思いながら箱を拾い上げた金太郎。数刻もせぬうちに彼を探し当て、"ぷでぃんぐ"の箱を返そうとするも"お約束のように"吉五郎は受け取らない。
「以前にもこういう事があったが、せっかくの"ぷでぃんぐ"だ。受け取って早く食べると良い。」
「…とは言っても、俺が茶屋の椅子に忘れたモノだ。もう諦めていた"ぷでぃんぐ"を受け取る訳にはいかん。」
"金太郎、お前もお節介な奴だなあ"と、笑いながら言われる。
同じ江戸っ子どうし、"受け取らない"と"受け取らせる"のせめぎ合いが始まりそうだと分かったのは、このやり取りが"2回目"だからである。…そうなると、2人は"とある"人物の顔を思い浮かべた。
「そうだ、今回もお奉行に決めてもらおう!」
「俺達がここで言い争うよりマシだな。」
さすがに2回目は、すんなりと話が終わりそうであった。
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