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「けど……いまはちゃんと見えてるんだよな? おれのこと」  わたしは静かにうなずく。希海はほっとしたように息をつく。 「……よかった」  きっと希海はたったひとりで、この世を彷徨っていたんだろう。  誰にも気づいてもらえないまま、事故の日から一か月以上もずっと。  すると希海が、へらっと笑ってこう言った。 「じゃ、とりあえず、ここにいさせてよ。せっかくだから東京の街、満喫したいし」 「は?」 「さっき東京ドームでオープン戦見てきたんだ。明日はスカイツリー行ってみたい。千歌ちゃん、一緒に行かね?」  なんだこいつ。孤独な幽霊になったことを、嘆いていたんじゃなかったの? 「……いや無理。わたし明日も仕事あるから」 「はぁ? 仕事と幽霊、どっちが大事なんだよ! 呪うぞ?」 「呪うって、どうやって?」 「いや……よくわからんけど」  希海はくしゃくしゃと頭をかく。困ったときの癖だ。  本当に幽霊なんだろうか。目の前にいるこのひとは。  だって見た目は、人間となにも変わらない。  足だってちゃんとあるし、わたしの知っている希海そのものだ。  二度と会えないと思っていた幼なじみ(の幽霊)は、その日からわたしの部屋に居座った。
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