27人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
3
「ねぇ、そろそろ行きたいところ、行きつくしたんじゃないの?」
「まぁ、そうだなぁ」
その日もコンビニの弁当をつつきながら、わたしは聞いた。
希海がここに来て、もうすぐ二週間になる。
「あ、でもまだ一番大事なことしてないや」
「一番大事なこと?」
目の前で希海がにっと笑う。
「千歌ちゃんとでかけること」
わたしはさりげなく希海から視線をそらす。
「土曜日は一緒にどっか行こうよ」
「無理」
「すぐ近くで桜咲いてたよ。おれ、千歌ちゃんと桜が見たい」
「無理。いろいろやることあるの。わたしあんたみたいに暇じゃないんだから」
希海がむすっとふくれる。
「千歌ちゃんさ、おれが来てから、全然笑わないよな?」
笑えるはずない。
「おれたちせっかく会えたんだからさ。もっと楽しも……」
「希海は」
わたしは希海の言葉をさえぎった。
「いつまでもここにいたらいけないんじゃないの? ちゃんと希海には希海の行くところがあるんじゃないの?」
わたしは弁当に入っていた唐揚げを口に入れる。
なぜかなんにも味がしない。
最初のコメントを投稿しよう!