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お願い、パパ、あたしを見捨てないで!
大声で叫んでみた。そしたら、
「お……お前なんか……お前なんか、もう娘じゃない!」
いままで見たことのない怖い、本当に鬼のような顔をして、どなりつけられた。
あ……。
瑞希は気力を失った。手から力が抜けた。
その一瞬の隙をついて、パパが乱暴に瑞希の手をひきはがした。
きゃっ。
瑞希はとうとう舟から離れてしまった。
助けて。捨てないで。あたしを乗せていって。
泳げない瑞希は、あっぷあっぷしながら手をのばす。
「そこっ……その板につかまるんだ、瑞希っ」
そんな叫び声が聞こえたのと同時に、もがいた手に、硬いものが触れた。
板だ。
小さな板。
瑞希はしがみついた。
幅は数十センチ、長さは一メートルあるかないかの小さな板で、瑞希ひとりを支えるのもやっとだが、ともかく水に沈まないでいられた。
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