家族の舟板

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◇◇◇ 「あっ、瑞希(みずき)ちゃん、気がついた?」  目をあけると、やけに白っぽい天井が目にはいった。  視界の端で、ママの妹、つまり瑞希にとっては叔母にあたる史恵(ふみえ)さんが、瑞希の顔をのぞきこんでいる。  自分は仰向けに寝ているらしい。ここは、少なくとも自分の部屋ではない。  そう自覚した瑞希は、あわてて起き上がろうとしたが、なぜか体が動かない。 「あっ、動かないで。そのまま、そのまま。瑞希ちゃん、交通事故で重傷を負ったの。それでいま、この病院に入院しているの。待って、看護士さんを呼ぶから」  史恵さんがナースコールする。  瑞希は彼女の言葉で思いだしていた。  休日に、一家三人で、海岸沿いの道路をドライブしていたのだった。パパが運転し、瑞希は助手席、ママは後ろの席に座っていた。  突然、対向車線を走っていたトラックが、こちらの車線へ突っこんできて、そして……。 「海に……」  車ごと海面に落ちていったのを思いだした。まるで岩にぶつかったような強い衝撃があって、それから……覚えていない。 「叔母さん、パパとママは?」  包帯でぐるぐる巻きにされた頭を動かさず、ナースコールを終えた史恵さんに訊いた。 「それが……ね……」  史恵さんが言いよどんだ。目頭に、涙が浮かんだのが見えた。  それですべてわかった気がした。なぜ、パパとママではなく、叔母さんがそばにいてくれるのかも。
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