プロローグ

1/1
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

プロローグ

 昔からよく言われてきたことがある。俺は他人よりも優れているらしい。  幼い頃は周りの大人からは、神童とか二千年に一人の逸材とか、色々とおだてられていたが、俺からしてみたら、これくらいの事どうして出来ないの?どうして分からないの?と、心の中では周りをバカにするような、そんな可愛げのない子供だった事は強く覚えている。  何でも一人で出来たから、周りを度外視し、実の姉も両親ですら全く頼らなかった。  それくらいに周りの人間を見下げていた小学生時代、ある事件でクラスメイトに助けられた事がきっかけで、今の俺が出来上がったのだ。  今となっては、そいつは俺の大切な親友となり、十八歳となる今日まで、ずっと一緒に過ごしてきた。  ・・・と、そろそろ俺の昔話はこの辺にしておこう。  俺は今、まるでバケツをひっくり返したような大雨の中、傘もささずに立っていた。雨音で掻き消され、他には何も音が聞こえない。  雨のせいか、周りの景色はまるで磨りガラス越しに見ているようで、周りの状況がわからない。  俺はいつの間にか、場所もわからないここに立ち尽くしていた。だけど、ここがどこなのかは不思議と理解できた。客観的に今の自分の状況を分析する事ができたからだ。  こんなひどい大雨なのに、全く濡れていない自分自身。雨音以外に音もなく、周りも靄がかかったようにぼんやりしている。  そう・・・・・・ここは、夢の中だ。  夢の中と認識した途端に、磨りガラス越しに見えた景色が、徐々に輪郭を帯び始めた。  やはり、ここは雨の中だ。ザッと降る様子から、ゲリラ豪雨というやつだろうか。  普通のゲリラ豪雨なら、厚い雨雲で薄暗くなるはずだが、この場は不思議と明るい。まるで朝霧の中にいるかのようだ。  周りがだんだんと明瞭になる。俺の近くには、背の高いものが立っていた。およそ三メートル弱くらいか。  まだぼんやりしていて、何かは分からないが、何か・・・格子状のものが見える。これは何だろう。他にもいくつか建造物が点在しているようだ。  夢の中だから、深く考えたところで、何も意味をなさないが、どこか懐かしさを覚える。俺の記憶から作り出した場所なのだろうか。  ふと、背後から誰かに呼び出された気がして、振り返った。  反射的に振り返ったが、当然そこには誰もいない。だが、感覚で理解した。おそらくもうすぐで目が覚めるのだろう。  今まで明るかった周りが、さらに明るさを増して、俺のことを包み込んだ。眩しすぎて目が眩んでいくと同時に、意識が薄らぐ。  微かな意識の中、背後で落下音が聞こえた気がした。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!